せいぎのみかた
第7話「紅白運動合戦」

※前回のあらすじ※
いろいろ大変なこともあったが、ついに昴も変身出来るようになり、
やっと5人全員が変身出来るようになった。
だが、戦いはまだ始まったばかりなのである。


薄暗い廊下の中、ブラックドラゴンは一人静かに歩いていた。
人の気配はそこには無く、ただ彼の足音のみが響き渡る。
暫くして彼の前には宇宙船のものには似合わない、観音開きの扉が姿を現した。
四隅には唐草模様に似た装飾が施され、中央には何やら竜のような、あるいは犬のような怪物の装飾が施されている。
ブラックドラゴンはその彫刻に手をかざす。
すると彫刻の眼が怪しく赤く輝きだし、扉は重々しくも、だが音も無く滑らかに開いた。
ブラックドラゴンはその中の部屋、ナイトメアとの謁見の間へと入っていった。
部屋の中央まで進むと、ブラックドラゴンは跪いた。

「御呼びでしょうか、ナイトメア様。」

その声に呼応するかの様に、ブラックドラゴンの目の前にホログラムのナイトメアが姿を現した。
そのホログラムのナイトメアは口を開いた。

「暫く兵を送るのをやめ、戦略を練る事にしたそうだな。」
「はっ。このまま兵を送ったとしても、ただ戦力を無駄にしかねないと…。」

ナイトメアはブラックドラゴンを睨む様な表情をし、呟く。
「この私の作った兵達では力不足だとでも…?」

その言葉にブラックドラゴンはハッとして、
「いっいえ!! 決してそう言う訳ではッ!!」と、彼らしくなく慌てふためいた。

だが、次の瞬間ナイトメアは、不敵な笑みを浮かべ、
「フフ、冗談だ…、パワークリスタルとリンクした者の力はこの私が一番良く知っている。そう、一番…な。」

ナイトメアは改めてブラックドラゴンに問うた。
「して…、その決定に他の3人も納得はしたのか?」
「一応…。納得したようには振舞っておりましたが、ゴーストキラーとクルーガーはやはり納得できないようです。」
「そうか…あの2人なら、私やお前に秘密で勝手にクリスタルを手に入れようと動くかもしれぬな。」

その言葉に、ブラックドラゴンは身を乗り出して叫んだ。
「!! それは、この私が決してさせません!!」

しかし、ナイトメアの言葉は意外なものだった。
「いや、かまわぬ。だが、まだクリスタルを手に入れる訳にはいかぬ。あ奴等には高ランクの兵を使えない様にしておけ。」
「それは一体どういうことなのですか?」
「我等の目的はあくまでパワークリスタルを手に入れる事だ。あ奴等は目的の為なら手段を選ばぬ所がある。
その所為でパワークリスタルを手に入れるのがさらに困難になりかねん。実際そのような事が一度起こってしまったしな。」

ナイトメアの言葉にブラックドラゴンはある事を思い出し、
「あの時の事で御座いますか…。あの時、私がもっとしっかりしていれば…ナイトメア様にご迷惑をかけずに済みましたのに…。」
と、悔しそうに呟いた。

しかし、ナイトメアは、
「確かに、あ奴等の暴走を許してしまったという事は許されぬ事だ、しかし、起こってしまった事はどう悔やんでも仕方ない。これから気をつければ良い。」
と、言った。

「しかし…。」
ブラックドラゴンは納得がいかず、ナイトメアに詰め寄る。
しかし、当のナイトメアは、
「あの時の事で私はお前を処罰するつもりは無い。さっきも言った様にこれから気をつけよ。それに、あの時は思いもよらぬ収穫もあった。それで帳消しだ。」

「左様で御座いますか…。」
ブラックドラゴンはそう言ってうなだれてしまった。

ナイトメアはそんな彼を慰めるかの様に、
「とりあえず、お前の提案は許可しよう。だがそれに加え、兵の増強を命じる。そしてあの2人に動きがあれば、逐一私に報告する事。解ったな。」
と、言った。

それにブラックドラゴンは、
「了解しました。」
と深々と頭を下げた。

「話は終わりだ、もう下がって良い。」
そう言うとナイトメアのホログラムは消えた。

ブラックドラゴンはその場で一礼をすると、踵を返し、謁見の間から立ち去っていった。

自室でナイトメアは、
「まだ、まだ、クリスタルには成長してもわらねばならん。その真の力を私が手に入れる為にはな…。」
と、一人ほくそ笑むのだった。


それから数十分後、ブラックドラゴンは会議室に改めて他の四天王3人を招集した。

クルーガーは少し苛立った様子で、
「今度は何だ!? また作戦の変更か!?」
と皮肉っぽくブラックドラゴンに言うと自分の席に着いた。

ゴーストキラーも、
「俺達は俺達で、どうやってクリスタルを手に入れようか作戦を考えているってのによ。」
そう言うと、どかりと乱暴に席に着いた。

ライガはそんな2人を無視するかの様に静かに席に座ると、ブラックドラゴンに問い掛けた。
「して、私達を又呼んだ理由は何なのです?」

ブラックドラゴンは、3人の顔を見渡して、
「うむ、正式にナイトメア様から許可がでた。そして、それに加え、兵の増強をせよとの命がでた。」
と、言った。

「そんな事する必要は無いだろう。とっとと全総力を挙げて、奪い取ってしまえばいいじゃないか。」
ゴーストキラーがそう吐き捨てた。

その言葉に、ブラックドラゴンは珍しく言葉を荒げた。
「あの時、誰かがそうやった事で、我が軍団に多大な被害が出た。と、言う事を忘れてしまったようだな、ゴーストキラー。」

あまりの迫力に、ゴーストキラーは「うっ…。」と、言うと押し黙ってしまった。

しかし、クルーガーがブラックドラゴンに反論した。
「あれは、少しばかり作戦の予定が狂ってしまっただけに過ぎない。」
そう言った後、クルーガーは何かを閃いたらしく、
「!! そうだ、もう一回チャンスをくれれば、もっと上手くやって…。」
と、言いかけたその時、

「黙れ。それ以上勝手な事をしてみろ。さすれば貴様等の命は無いぞ。」
と、ブラックドラゴンが言った。
口調は静かであったが、だが、その態度には、今にもここにいる3人を皆殺しにしそうな程の殺気に溢れていた。

流石のクルーガーも、その迫力に気圧され、もうそれ以上は何も言わなかった。

張り詰めた空気が辺りを包み、しばしの沈黙が続いた。

その時、そんな雰囲気を壊すかの様に、おもむろに「ふー…っ。」とライガが溜め息をついた。

そして、
「話と言うのはそれだけか?」
と、告げた。

ブラックドラゴンは静かにただ、
「ああ。」
と、答えた。

「そうか。了解した。では、私はこれで失礼させてもらう。」
そう言うと、ライガは、呆気に取られるクルーガーと、ゴーストキラーを尻目に、席を立つとそのまま部屋を出て行ってしまった。


ブラックドラゴンは、先程までの激しい怒りと殺気が嘘の様に、冷静さを取り戻していた。
そして、
「……。これで話は終わりだ。では、解散とする。」
と告げると会議室から去っていった。


そして……。

自室に戻ったクルーガーは、
「畜生、どいつも、こいつも、ふざけやがって!! まだ、あの時の事をうじうじと気にしやがって…。」
そう呟くと、密かに隠し持っていた、イービル・コアを取り出した。

「だが、他の奴等が兵を出せないって事は、この俺がクリスタルを手に入れるチャンスだ…。」

にやりと不敵に笑みを浮かべると、クルーガーは呟いた。
「目覚めよ。我が手下よ!! そして、クリスタルを手に入れるのだ!」

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